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2004/11/22(MON) 『苦労した分だけの』 笹田 啓子

 今年これまでで、一番忘れられないゴールがある。
 7月10日の博多の森。連敗記録を伸ばしていた時。
 こんな時に遠征で福岡まで来てしまうなんて、我ながらいい度胸としか言い様のない。そんなふうに思っていた。
 「今日は勝てるんじゃないのか」もちろんそうは、僅かに思ってはいたけれど、あのころは毎試合いつもいつもそんなふうに思っていた。「今日こそは勝てるんじゃないか」って。だけど試合が終わればその思いにいつも同じ言葉がついてった。「…って、思ってたんだけどねぇ」。僅かな希望、根拠のない自信はいつだって基本仕様。

 だから、目の前で相川のゴールが決まった時は、そりゃもう飛び上がった。というか、市村からのクロスが出てきてそれに相川が飛び込むのを見るのとほぼ同時にこちらも飛んでいた。押されていた中から生まれた、見事な形での先制点。あの爽快感は、それまで暫く味わうのことのなかったもの。その先制点を守り抜いて漸く連敗ストップ、私が飛び上がった相川のゴールは約4ヶ月ぶりの勝利をチームにもたらした。

 そのころ格別すぎた勝利の味は、いまもあの相川のゴールを思い出すたび胸に蘇る。
 いくら育成の年と心に決めても、やってること・やろうとしていること自体は絶対に間違ってないと信じていても、現実問題として勝てないことの辛さというものは、やはりというか案の定想像を越えていて。けれどそのときの想像以上の辛さがあったからこそ、連敗を止めたあの福岡戦での勝利の嬉しさもまた想像以上のものだった。

 試合に勝ってサポーターがあちこちで涙ながらに抱き合う光景を見たのは、いつの試合以来だったか。試合に勝つって、こんなに嬉しいことだったのか。ひとつ勝つことがこんなに嬉しいのなら、こんな喜びを味わえるのなら、苦労するのも悪くないよな。などとそのとき思ってしまったから、そのあともまた連綿と厳しい戦いが続いてしまったのかもしれないが。

 だけどその苦しい日々だって。それらがあったからこそ、天皇杯での市原撃破は今年このシーズンを---温かい拍手で、野次で、溜息で、人それぞれのスタンスで---見守り続けてきたサポーター達にとって堪えられないものになったわけで。あんなに嬉しい勝利はなかった。そして今、天皇杯を勝ちぬけているチームだけが持てるポジティヴな12月のシーズンを、心待ちにしている。4回戦を勝利したあと、チームスポンサーである各旅行会社から発表された熊本への応援ツアーは、軒並み発売から即満席となる勢いだという。こんな楽しさは、いったい何時以来だったろう。

 深い苦しみがなければ深い喜びなど生まれない。
 雨が降らなければ虹はかからない。
 苦労はちょっとはしてもいいけど、出来れば短くねなんて思ってる心のうちはいつだって空の上から見抜かれている。散々与えられた辛い日々が、これからのゴールを勝利をどれだけ彩るかと期待はしてるけど、さて、その日々が果たしてすぐ来るものやら、まだもう少しはこけつまろびつするのか?と意地悪且つ冷静な目で眺めてもいる。でもどれだけ苦労しても、苦労した分だけこのチームはきっと凄く大きな喜びを私達にもたらすと、信じられる年の終わりはなかなかいいものです。たくさん苦労して、それ以上にたくさんいい想い、来年したいね。

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